10月 猪苗代登山口から錦秋の磐梯山へ

山行
猪苗代湖

先日の安達太良山に続き、2024年10月15日(火)は磐梯山に登る。

猪苗代登山口からの往復コースだ。

距離12.2km
高低差1,126m
コースタイム6:30
山と高原地図11『磐梯・吾妻・安達太良』昭文社、2024年

前日は猪苗代町のあるぱいんロッジに泊まった。

あるぱいんロッジ

自家製野菜をふんだんに使った夕食が美味しかった。特に味の染みた蕪のポトフが気に入った。

翌日、4:20にアラームが鳴る。窓の外は真っ暗だ。朝食に握っておいてもらったおにぎり1個、卵焼き、金平牛蒡を食べる。

5:45に夜明けと共に出発する。5:50頃、土津神社を通過する。参道入口のもみじの上端が朱に染っている。

夢の跡といった感の廃墟を左手に砂利道を直登すると猪苗代スキー場の駐車場に飛び出す。時刻は6:05だ。

猪苗代登山口からゲレンデ頂上

猪苗代スキー場

トイレに寄りリフトの乗り場を覗く。猪苗代スキー場の登山者向け夏季リフトは日祝日の7:30〜14:40のみ運行である。リフトに乗れば猪苗代登山口のある標高720mからリフト終点の1100mまで20分だが、平日に訪れたので徒歩で登る。

磐梯山の頂きは雲の中

夏の朝、閑散としたゲレンデの真ん中に砂利道が伸びる。これが登山道らしい。えっちらおっちら登る。背丈の低い草の草の茂る斜面に5m四方ほどの板を敷いたテントサイトが点在している。積雪とスキー客の減少が重なりスキー場の営業も厳しさを増していると昨日、利用したタクシー運転手さんが話していた。

正面にあるはずの磐梯山の頂は雲の中だ。振り向けば猪苗代湖が朝日に照らされ白く輝いている。

ゲレンデを直登

天気予報では曇時々晴だ。雲は手の届きそうなところをのったりと動き、切れ間から青空も覗く。高低の雲が重なり別々の方へ動くのは万華鏡の様だ。安達太良山より期待が持てる。

足元に目をやれば、栗の実が沢山転がっている。里の秋の唄を思い出す。登るにつれて木の葉が緑から黄色へと変わっていく。

徐々に斜度を増すゲレンデを登り7:25頃、リフトの終点に着いた。ゲレンデと登山口、その向こうに猪苗代の町が一望だ。リフトで来たかった。

ゲレンデ頂上から沼平分岐

リフト頂上から登山道へ

ゲレンデは終わりここから登山道らしくなる。環境省の登山者カウンターを抜けると植生が変わった。栗の木は低くなり、黒土の足元にはシダやササ、ツツジのような葉の下草が増える。標高が上がり冷え込みもあるのか、葉も黄色く色づいてきた。気分も高揚する。

7:43、短い坂を登り切るとやや平坦となり、林間に岩の転がった場所に出た。看板によると天の庭という。登山口から1.8km、山頂まで2.8kmだそう。広葉樹林の山道に岩が点在し美しい。天の庭とは良い名だ。

スキー場が近いからかまだ携帯の電波が入る。家人より帰宅の時刻を尋ねられ、16時前に猪苗代を出て22時過ぎに着く予定であると伝える。

磐梯山が姿を現す

7:57、大きな岩が現れる。岩の上に立つと会津の町と磐梯山の頂が見えた。写真に収めるが、もうここは圏外で送ることはできなかった。

猪苗代の方から町内放送で、8時を報せるメロディ聞こえる。休憩をとり水分とキャンディを補給する。初老の単独行のお爺さんと出会い話をする。栃木からだそうで日光は庭のようだという。北関東には有名な山が多い。話を聞き訪れてみたいき持ちが強くなった。

甘酸っぱい実

直径8mm程の紅色の実をたわわにつけた低木をいくつか見た。口に含んでみると酸味と渋みがある。どうも体が欲しているようで美味しく感じる。ビタミン補給にいくつか食す。

8:33、赤埴山への分岐を見送り巻道へ進む。道は平坦で歩みも軽やかだ。

赤埴山への分岐

黄葉のはじまりも美しい。萌える新緑や瑞々しい青葉も心踊るが、くすみかけた黄葉や最期に燃えるような紅葉も好きだ。まるで人の一生のように味わい深い。そんなことを思う自分にまだ青いななとひとり笑う。

再び赤埴山の分岐だ。少し降りまた平坦な道をいくと、南側からは見えなかった荒々しい岩肌が姿を現す。北と南で全く様相が違う。裏表の激しい人は困るが山なら面白い。

沼ノ平から天狗岩と山頂方面

9:05、沼ノ平に着いた。湿原や沼が点在する山上のユートピアだ。笹原の湿原の向こうに山頂の岸壁が錦の屏風絵のように聳える。ナナカマドは赤い実を残して葉を散らしている。

沼ノ平の石碑
ベンチもある休憩スポット

渋谷登山道の分岐は崩落により閉鎖されていた。ロープの下でアザミは頑張っていた。

沼ノ平分岐から弘法清水小屋を経て山頂へ

中央の湖は桧原湖

分岐から少し登り9:44、沼平分岐に出る。櫛が峰の威容が際立つ。崩落の荒々しい斜面や裏磐梯が一望できる。地図を広げ山座同定する。山腹にゲレンデが蝶々のような模様を描くのは西吾妻、その麓に五色沼、秋元湖、小野川湖と並び、一際大きなの桧原ひばら湖などの湖がある。

空腹を感じおにぎりを齧る。10:10出発。

櫛が峰

弘法清水小屋は売店として営業している。カップ麺、バッジ、絵葉書等を取扱う。ハンコを貰い、稲穂の奥に磐梯山の絵葉書を買う。

弘法清水小屋

小屋の方に今年の紅葉について尋ねると、ナナカマドは色づく前に落葉してしまったそう。気候の変化の影響だろうか。弘法清水で喉を潤し、10:50に出る。磐梯山は水の豊かな山だ。

山頂まで500m程だが3,40分の道のりだ。ここから斜度が厳しくなる。

中央に桧原湖

しかし登山道の両脇の木々は紅葉、振り向けば八方台の錦の絨毯、桧原湖等の絶景が力付けてくれるので、疲れを感じる暇がない。

11:32、標高1,816mの山頂に到着する。

岩のごろごろした山頂に祠が建っていた。

吾妻山が横たわる

南に猪苗代湖、西に飯豊連峰と麓に喜多方の街、金曜に登った安達太良山の乳首も見える。360度の展望だ。先日の借りを返し満足する。

猪苗代湖

一通り写真を撮り、昼食後は無線で郡山市や五泉市の局と交信した。山は秋の空気だが五泉市は25℃で蒸暑いという。

下山

赤埴山

帰りは15:02バスセンター発猪苗代駅行きのバスに乗る為、早足で降りる。荷物が軽いのと最近走っているためか下りで走っても膝の痛み息切れは無い。それでも時間ぎりぎりなのでタクシーを呼ぶか、徒歩になるかもしれないとの考えがよぎる。

猪苗代スキー場のゲレンデ

14:45にあるぱいんロッジに戻りトランクを拾う。女性ご主人が、駅まで送るので風呂に入っていくように勧めてくれる。ご好意に甘える。体を洗い湯船に浸かると生き返った心地となった。

下山時は磐梯山が見送ってくれた

15:25に宿を出る。ご主人の運転するSUBARUは西陽に輝く田園を滑っていく。昨夜の蕪が美味しかったと伝えると自家製だという。新米は今、収穫の時期だから出せなかったと仰る。振り返ると先程まで歩いていた磐梯山がどんと座す。15:30にJR磐越線の猪苗代駅に着く。

駅前にはタクシーが1台もいない。皆、縦走で奥磐梯に降りた登山者を迎えに行っているのだろうとご主人。また来てくださいと言い颯爽と走り去る車を見送る。暖かなもてなしに感謝の念が絶えない。

猪苗代駅前

猪苗代は野口英世の生地である。野口英世記念館の看板に描かれた肖像と千円札のツーショットを撮る。15:58に磐越西線の快速で猪苗代を後にする。

野口英世博士の誕生の地

車窓を楽しむ前にアミノバイタルを飲む。車窓を眺めるがガラスが曇りあまりよく見えない。列車の揺れが心地よくいつの間にか眠りに落ちていた。

16:35に郡山到着。帰宅の高校生が目立つ。今日は平日だったと思い出す。

郡山駅

駅前に白い円柱形のものがある。何かと思えばモニタリングポストだった。

売店で職場の土産にずんだカントリーマアム、家族に胡桃柚餅子を買う。夕食に海苔牛駅弁を買う。また山小屋で買った磐梯山の絵葉書を家族に宛に送る。

郡山から東北新幹線に乗る。東北新幹線を使うのは2012年振りだろうか。東日本の被災地を福島から気仙沼まで自転車で走ったことを思い出す。夕食後はまどろむ。

東京駅

東京に18:24に着き、18:39発のぞみ号で出る。新幹線は今日も定刻運行だ。当たり前の様に享受しているが、数多の人々の努力に支えられていると思うととんでもないことだ。

やはり旅が好きだ。知らない町の知らない景色、知らない人々の営みに触れることで、自分の当たり前は実はそうではないことを改めて知る。衝撃を受けることもあるが嫌ではない。

右肩を窓ガラスに当てて振動と風切り音を感じる。キーンと飛行機の離陸音の様な音がする。新幹線に翼をつければ飛び立つのではないかとおぼろげに思う。

20:51に京都駅着。近鉄電車に乗るとエアコンがゴーゴー唸っている。22時過ぎに帰宅した。

食料

  • 水 :600ml
  • 朝食:おにぎり1個、卵焼き、金平牛蒡
  • 昼:おにぎり1個、どら焼き1個
  • 行動食:ハイチュウ
  • 夕食:駅弁

費用

  • タクシー(郡山〜猪苗代):14,300円
  • あるぱいんロッジ(1泊2食):9,800円
  • 絵葉書:100円
  • 夕食(駅弁):1,300円
  • 交通費(猪苗代〜関西):20,610円
  • 合計:46,110円

参考

  • 山と高原地図11『磐梯・吾妻・安達太良』昭文社、2024年
  • 竹地里加子編『日本百名山登山地図帳 上』JTBパブリッシング、2016年8月1日、p.p. 56, 57, 119
  • 猪苗代スキー場(閲覧日:2025年9月15日)https://www.inawashiro-ski.com
  • Alipene Village(閲覧日:2025年9月15日)https://www.alpine-village.jp

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