はじめに
連休は山に行こうと密かに心に決めています。
しかし2025年の天皇誕生日の前日も、私は天気予報とにらめっこをしていました。
お目当てだった滋賀の赤坂山は天候が芳しくなさそうです。
気を取り直して天気図を眺めていると西高東低の気圧配置。太平洋側の山々ならとてんくらを物色していると百名山の恵那山に晴予報を見つけました。
懸念は高低差約1300m、16kmの道のりです。先日、同僚とハーフマラソンを走って以来、少し強気になった私は体力の確認も兼ねて進路を東へとりました。
駐車場から広河原登山口まで

22時頃に車で奈良を出発し、名阪国道、伊勢湾岸自動車道、中央道と乗継ぎ国境の恵那山トンネルを抜けて、目的地の青木屋臨時駐車場に深夜1時半に着きました。
先客の車は4台でした。ありがたいことに料金箱は見当たりません。トイレもありませんので予め阿智西自治会館の公衆トイレなどで済ませておくと良いでしょう。
4時半に起床。おにぎりとカップ麺で簡単に朝食を済ませます。準備を整える間にも続々と登山者がやってきます。5時半頃には駐車場に停められなかった車が、路上に溢れていました。
到着は前日深夜が良いかもしれません。

まだ暗い6時10分、まずは広河原登山口へ向けて出発。空気は頬を刺す冷たさで、ほのかに明るくなった空には細い月が浮かんでいます。

夏は峰越林道ゲートまで車を乗り入れできますが、今日は広河原登山口まで長い長い林道歩きです。
6時20分、左手に橋のある分岐を右に取ります。車両通行止めの看板から先は積雪で地面が見えません。ここでアイゼンを履きます。

7時5分に峰越林道ゲート着。登山届用の箱もあります。広河原登山口公衆トイレは冬季閉鎖されており使えません。

楽天モバイルの携帯電話の電波は1本。車止めのゲートを超え、本谷川の左岸を遡ります。積雪はガードレールの半分位ですが新雪は10cm弱、しっかり踏まれており歩きやすいです。

短いトンネルを抜けると程無く広河原登山口に着きました。時刻は7時40分。
広河原から山頂まで

広河原登山口から登山道に入ります。標高が上がるとともに積雪も増えてきました。
8名程の登山者がおり、チェーンスパイクからアイゼンに履き替えています。12本爪アイゼンとチェンスパを両方持ってきている方もいらっしゃいました。

一度、本谷川まで降りて木橋を渡り、対岸の斜面に取り付きます。
渡渉点から二合目付近まで急坂です。日に照らされるとさらに温まり、上着を脱いでミレーのアミアミとmont-bellのロングTシャツ姿となりました。

二合目を過ぎると傾斜が少し緩み、四合目を過ぎると緩やかな尾根道となります。風に吹かれて寒くなり再びシェルを羽織ります。
風は冷たく、化繊のインナーとテムレス越しに指先の冷たさを感じます。足は冬靴でぬくぬくですが、手指の防寒を抜かったと反省しつつ進みます。

しばらく樹林帯の登りが続きますが、さらに進むと展望の良い尾根道となります。山座同定をする登山者の声が聞こえ、「ふむふむあれがそうか」とおこぼれに預かります。
青空の下、雪を戴く南アルプスが顔を出します。以前登った白峰三山、未踏の塩見岳、明石岳、聖岳が一望できます。

さらに標高を上げると、中央アルプスや御嶽山もダケカンバの木立の向こうに姿を現します。

再び針葉樹の森に入り、急傾斜を頑張ると2071mのピークに達し、尾根道が緩やかになるといよいよ山頂近くです。

雪の上を歩くので普段は気にならないであろう高さの枝が、しょっちゅうザックに引っかかり難儀します。しかし足元にはもふもふの雪。関西の低山では珍しい感触に元気が湧いてきて、ストックで雪のお化け等作ります。
ハーフマラソンによる体力貯金のおかげか余裕があります。この頃は。
素晴らしきかな恵那山

11時13分、恵那山山頂に到着です。
山頂は、前評判通り木々に囲まれ景色には恵まれませんが、空を見上げれば抜けるような青空が広がっています。
がっかり山頂との噂で景色を期待していなかったのですが、展望台に登ると雪で若干嵩増しされ、少し遠望もできました。
おかげで気分も上々となり、周囲の針葉樹も粉砂糖をまぶされたように見えてきて、「クリスマスケーキの上に立つサンタってこんな気分なのかな」と柄にもなくメルヘンな想像をします。

山頂には恵那神社の奥宮があります。お社の屋根には1m以上の雪が積り、神様も重たそうです。

山名板には「胞山」ともあります。これは古い呼び名で、日本神話において伊邪那岐と伊佐那海の二神が天照大神を産み、この山頂に胞衣を納めたことに由来するそうです。

山頂を辞して広々とした尾根を進むと、右手に中央や南アルプスが見えてきました。しかも屏風を広げたような広々とした景色です。なるほど山頂以外の場所は残念ではなかったのです。
途中、他の登山者から恵那山々頂小屋の近くに景色のよい場所があると教えてもらい、足を運ぶことにします。

広々とした台地を進み、少し下って小屋に達します。
小屋の脇から少し登るとさらに素晴らしいパノラマが広がっていました。

深田久弥が『日本百名山』に「頂上からの南アルプスの大観はすばらしかった」と記しているのは、この眺めのことだったのでしょう。
南アルプスの峰々の奥に「ここにいるよ」とばかりに富士山がちょこんと頭をのぞかせています。

深田翁は「ウェストンの紀行では、赤石岳の南肩に富士山が覗いていることになっているが、それは見えなかった」と書いています。翁の分まで目に焼き付けておきます。

小屋で昼食をとります。小屋には土間と板の間の2部屋があります。中津川観光協会が設置した小屋のようです。

太い梁のしっかりとした造りで雪に埋もれていても安心です。ありがたや。

近くに恵那山山頂公衆トイレもあり何と冬季も使えます。維持に携わってくださる方々に感謝です。

ルーティンの無線交信を楽しみ、愛知の知多半島などと繋がり悦に入っていると青空から一転、雲が流れてきたので13時過ぎに下山を始めます。
下山
休憩の時からサーマラップEXジャケットにシェルを着て進みましたが、四合目からの下りでは、やや暑さを感じました。フリースでもよかったかもしれません。

絶頂に達し同じ道を下るのは少し物足りないものです。
気の緩みか体力貯金が尽きたのか、下山の途中から左膝外側に痛みが生じ、さらに両内腿が攣りかけました。
「やはりランニングと登山は違うのか」「トレーニングや歩き方がまだまだなのかも知れない」等様々な思いが去来します。

ストックを前につき、時々ストレッチもしつつ進みます。さらに、途中から腹痛にも襲われ、恵那山の厳しさは登りよりむしろ長い下りにありと実感しました。
15時38分、峰越林道ゲートに到着。ここからは駐車場まであと少し。しかしトイレに貼られたポスターで寄ろうと思っていた温泉の最終受付が16時までと知ります。体の冷えと疲労を癒やす機会を逃し無念です。

16時25分、無事に駐車場へ戻りました。駐車場で岡山から来たというご夫妻とお喋りをしました。
中国地方には大山くらいしか高い山が無いので私達にはきつかったとのこと。私にもきつかったです。
長大な恵那山トンネルを抜けると西陽が迎えてくれました。内津峠PAで夕食と休憩を取り、西へひた走り23時半前に帰宅しました。
次回に向けての課題
- 手袋の選定
手先の冷え対策が不十分でした。インナーをウールに変更するか、より保温性の高いミトン型の手袋を試したいです。 - アイゼンの軽量化
アプローチにチェーンスパイク、登山道からは12本と履き替えている方もいました。2個持ちでは現在使用している12本爪ではかなり嵩張るので、よりコンパクトなBLUEICEのモデルが気になります。 - レイヤリングの工夫
新しく買ったmont-bellのサーマラップEXジャケットを使用しましたが、急な登りと急ぎ足の下りではオーバーヒートしてしまいました。薄いフリースでもよかったかも。
費用
1. 高速道路料金額
• 法隆寺IC〜天理IC:¥420
• 東名阪道:¥1,670
• 園原IC下車:¥2,000
• 帰路の高速料金:¥3,500
2. ガソリン代
• ¥168/L × 41.6L = ¥6,990
3. 飲食費
• 夕食(内津峠PA):¥990(コク旨醤油ラーメン&半チャーハンセット)
合計金額 ¥15,570
食料
1. 朝食
• カップヌードル
• おにぎり 2個
2. 昼食
• あんぱん 3個
3. 夕食
• コク旨醤油ラーメン & 半チャーハンセット(内津峠PA)
4. 行動食(登山中の補給)
• ドーナツ 1個
• ブラックサンダー
• ぱりんこ
• アミノバイタル
• アクエリアス 800ml
参考
- 竹地里加子編『日本百名山登山地図帳 下』JTBパブリッシング、2016年8月1日、p.p. 58, 59, 120
- 深田久弥『日本百名山』新潮社、2021年11月25日(60刷) p.p. 396-400
- 山と高原地図43『木曽駒・空木岳・中央アルプス』昭文社、2024年
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