5月 奈良の世界遺産の大峯奥駈道を歩く〜山上ヶ岳、吉野山へ電車とバスでアクセス 2日目

山行

5月 奈良の世界遺産の大峯奥駈道を歩く〜山上ヶ岳、吉野山へ電車とバスでアクセス 1日目」の続きです。

コース概要

 2日目は、山上ヶ岳の大峯山寺に参拝した後、山上道を北上し青根ヶ峰を経て吉野山ケーブルの吉野山駅をめざします。

 距離は約22.4km、コースタイムは約10時間40分です。

山行記録

小笹ノ宿から山上ヶ岳

 5:00頃に起床、7:00に小笹ノ宿を出発します。朝食はチキンラーメンに卵を入れていただきます。卵が一つあると満足感が高まります

 準備をしていると白装束を纏いデイパックを背負った修験者(山伏)姿の青年がひとり歩いてきます。

お堂の前に立つと、護摩木と線香を供え真言を唱えています。10分に満たない時間、ひとつひとつの丁寧な所作に見とれました。

 薄く雪の残る修験の道を歩き、山上ヶ岳は大峯山寺をめざします。木々の間から朝日が差込み、木陰と日向が交互にやってきます。

 体が温まってきたので立ち止まって上着を脱ぎます。ふぅと息を吸い込むと樹脂の甘い香りがしました。早朝の山の大気は心をしんと落ち着かせてくれるようです。そんな山の朝の静謐を味わうのも、山で泊まる醍醐味だと思います。

 三角の大きな瓦屋根が見えたら大峯山寺はもうすぐです。山上ヶ岳南東斜面は若干踏み跡が不明瞭ですので、よく足跡を確認し、おかしいなと感じたら踏み跡の確かな所まで引き返しましょう。

大峯山寺のお花畑

 坂の上に大峯山寺の屋根が見えます。8:00に大峯山寺に到着です。ザックと杖を置いて本堂でお参りします。ここまで無事に来れたことを感謝し、安全な下山を祈願します。

 参拝の後は山上ヶ岳頂上の「お花畑」へ行ってみましょう。残念ながらこの季節にお花は咲いていませんがその代わり、なだらかな笹原の尾根からは、南西から北側への展望が開けています。

北端の日本岩はこのルート随一の展望台です。岩の上に立つと高度感に怯みますが、南西には大日山や稲村ヶ岳、北側には和泉山地、遠く金剛生駒の山並みが見えます。そして北東には、吉野までこれから歩く山並みが一望できます。

 眼下の山間ににみえる集落は天川村の洞川(どろがわ)です。洞川は温泉地で、古来より山上ヶ岳への登拝の拠点でもあります。標高約850mの洞川から標高1,719mの山上ヶ岳まで、3つほどのルートがあります。

  • 尾根コース:大峯(清浄)大橋から洞辻茶屋を経て山頂に至る。茶店など整備の行き届いた参詣道。
  • 法力峠〜山上辻〜レンゲ辻コース:植林帯の尾根道を歩く。山上辻から南へ進むと稲村ヶ岳に至る。
  • レンゲ辻コース:沢道。ガレ場ありレンゲ辻手前は急な斜面なので注意。

 8:40に日本岩を後にします。龍泉寺の宿坊を横目に急な石段を過ぎると、8:55に西の覗(のぞき)と呼ばれる行場に到着します。断崖からロープで吊るされて崖の下を覗き込む荒行で有名な場所です。

山上ヶ岳から五番関

 9:10、門をくぐり大峯山寺を後にします。地形図では1,648mピーク付近です。

 その先の分岐では「下山道」と書かれた看板に従います。直進すると鐘掛岩ですが、下山時には立ち寄らず迂回路を通るように案内されています。岩場での混雑を避けるためでしょう。

 お亀石を見送り、木製の階段でぐんぐん標高を下げます。9:30ごろ松清店陀羅尼助茶屋を通過します。

 山上ヶ岳から洞辻茶屋までの区間は賑やかな参詣道です。天川村のホームページでも大峯山寺へのハイキングコースとして紹介されています。

 昨日の和佐又から大普賢岳までのコースでは多くの登山者と出会いましたが、ここでは親子や青年グループなどの参拝者によく出会います。

 登拝される方は「ようお参り」と挨拶をされます。はじめはなんとお返事すれば良いのかわからず「こんにちは」と返していましたが、そのうち私も倣って「ようお参り」とお返しするようになりました。

 9:40に洞辻茶屋に到着します。道は建物の中を通過しており、左右は商店と休憩所になっています。カップラーメンなど軽食も販売されています。

 9:50に洞辻茶屋を出発します。しばらく穏やかな尾根道を歩くと鎖のかけられた急坂が現れます。急坂の手前からは展望が開けています。

 10:20に勝負塚方面への分岐のある今宿跡を通過し、10:50に五番関に到着します。

五番関から試み茶屋

 五番関には女人結界門があります。またここは山上ヶ岳方面、洞川方面、大天井ヶ岳山頂方面、そして大天井ヶ岳の巻道という4方向への分岐点でもあります。2日目は荷物がずっしり感じます。もう登りたくありませんので、巻道を歩くことにします。

 ここで昼食にあんパンと牛乳を食べます。11:05に出発します。

 巻道には、崩落の跡が数箇所あります。人が歩けるように修復はされていますが、気を抜かずに通りましょう。

 新緑の眩しいブナのトンネルを抜けると12:10、二蔵宿小屋(百丁茶屋)に至ります。五番関からの大天井ヶ岳頂上の巻道はここでおしまいです。

 小屋は綺麗に管理されており、10分ほど離れた場所に水場があるとの看板も立っています。気持ちの良い木陰のベンチで10分ほど休憩します。

 小屋から程なく12:30に九十丁石に至ります。ここは天空林道と呼ばれる車道との交差点です。

 今回は距離が長いせいか、お腹がいつもより減ります。アルファ米を食べて12:45出発します。

 13:20に足摺の宿を通り過ぎ、13:40に四寸岩山(しすんいわやま)に立ちます。

 四寸岩山のあたりから、針葉樹林と広葉樹林の境界を歩きます。針葉樹林は葉を落とさないのであまり遠くのが風景が見えず私としては好みではないのですが、そんな場所も通らなければ帰れないので機械的に脚を動かします。日差しが遮られるのは救いです。

 14:00に薊岳を通過します。

 薊岳からは急な坂道です。これでもかというほどの下り坂です。ここを登るのはどれほどの仕事でしょう。

 途中、木に「弘法大師の道PROJECT」というラベルが巻かれていました。奥千本の石碑によると、弘法大師は少年の頃にこの道を歩き、3日かけて高野山まで辿り着いたそうです。

少年の頃、吉野南へ1日、西へ2日行き、幽遠の地を見つける。名を高野という。

石碑 性霊集(しょうりょうしゅう)

字が上手いだけでなく、人並み外れた体力と行動力の持ち主だったようです。

 私はというと、登山道に並行して設けられたモノレールを恨めしく睨みながら、ひたすら高度を下げていきます。もはや惰性で歩いています。

 14:15、ようやく降り切ると心見茶屋跡と書かれた看板があります。さらに進むとモノレール終点の小屋があり、車道に合流します。なお、ヤマレコの地図が示す試み茶屋跡の場所はこれよりも更に北へ進んだ車道上ですが、その場所にそれらしいものは見つけられませんでした。

 個人的にはこの案内板の通り、急坂の直下に茶屋がほしいです。それくらい疲れる坂でした。

試み茶屋から青根ヶ峰

 しばらく車道を歩きます。いよいよ山歩きですらなくなったようですが、歩かなければ帰れないので(以下略)。アスファルトの道路を荷物を背負って登山靴で歩くのは脚に堪えます。

 14:45、黒滝村方面への分岐を見送ります。

 14:50、「川上村」と記された丸太の道標を過ぎるとすぐに近畿自然歩道の看板があります。表示に従い登山道を歩きます。倒木が多く少し荒れています。

 15:05、再び車道に合流します。5分ほど歩くと山肌のあらわな見晴らしの良い場所に飛び出します。ここは舗装路と未舗装路、そして青根ヶ峰への階段のある交差点です。

 15:15、青根ヶ峰山頂に到着します。

 山頂は樹木に覆われ展望はありませんが、ベンチがあります。また山名板は複数枚あり、それぞれ表示されている標高が異なります。向かい合うように掛けられた2枚は互いに主張しあっているようです。10cmを争います。

青根ヶ峰から吉野駅

 ここは吉野山一帯は、万葉人らが遊んだ大和の奥座敷です。見どころ満載なのですが、私は以前にも歩いたことがあるのであまり脇見せずに歩を進めます。もうひと踏ん張りです。

 なお、山肌一面の木が伐採されているのが気になりますが、案内板によると桜の木を植林するためだそうです。22世紀には奥千本の景色も変わっているのかもしれません。

 15:55、金峯神社に到着です。出発前に本日より車両の乗り入れ規制が解除されると聞いていました。タクシーの乗り入れができるかもしれないと思い、ちょうど神社の前で出会った地元の男性に本日は車が入れるかどうか尋ねてみました。すると「途中まで乗ってく?」とお言葉をいただき、ありがたく同乗させていただくことに。

 車内でおじさんとお話をしました。

「昔、親父について大峯山までいってな。親父は大峯山の宿坊に荷揚げしてて。学がないもんはそんな仕事しかできんでしょう」と語られました。そう語る横顔は、どこか懐かしげな笑みが浮かんでいました。

 16:30頃、上千本口バス停付近まで送っていただきおじさんと別れました。途中、お土産にくず餅を買いに立ち寄ったお店でお店では、「売れ残りやけど、よかったら食べていって」とくず餅を振る舞っていただきました。

 吉野には優しい方がたくさんいらっしゃいます。

  16:55に金峯山寺(きんぷせんじ)を通過して、17:12、ケーブルカーの吉野山駅に到着です。

費用

 主に交通費です。

項目 費用
鉄道(大阪阿部野橋〜大和上市) ¥990
鉄道(吉野〜大阪阿部野橋) ¥990
バス(大和上市〜和佐又山登山口) ¥1,500
ロープウェイ(吉野山〜千本口) ¥450+手回り品¥230

食糧

 今回はいつもよりお腹が空きました。テント泊装備でなおかつ移動距離が長かったためかもしれません。筋肉の修復のためアミノバイタルの他、鯖の缶や卵をなどのタンパク質をいつもより多めに持参しました。効果のほどは不明ですが、翌日の筋肉痛はありませんでした。さらに食事の満足感は上がりました

 特に卵があると調理の幅も広がりそうなので、これからもテント泊の際には持っていきたいと思います。

1日目

内容
朝食 おにぎり、牛乳
昼食 おにぎり、惣菜パン、野菜ジュース
行動食 飴、ラムネ、柿の種、ゼリー飲料
夕食 アルファ米、さばの味噌煮缶詰、味噌汁、アミノバイタル

2日目

内容
朝食 チキンラーメン、卵
昼食 あんパン、牛乳、アルファ米、カロリーメイト
行動食 飴、ラムネ、柿の種、ゼリー飲料

装備

 基本的な装備品に加えて、宿泊のためのテントシュラフ調理器具モバイルバッテリーなどを追加しました。

 以下、今回あって良かった装備です。

  • モバイルバッテリー:文明人にはこれがないと。
  • Apple Watch×ヤマレコ:手元で地図が見られるのは非常に便利。ただし紙の地図も必携。
  • ボディーシート:1日の疲れが吹き飛びます。
  • サンダル:テント場で歩き回るには登山靴より便利。
  • 卵ケース:卵を加えるだけで山ご飯が豊かになります。
  • キャラバンのドライサック:シュラフなどのダウン製品を圧縮してパッキングしやすく!しかも水濡れに強い!

おわりに

 メインザックで1日に歩いた距離として過去の最長記録となりました。一度はひととおり歩いてみたかった大峯奥駈道の北側の部分をほぼ歩き通せたので満足です。ただし、九十丁石から吉野山の車道混じりの区間はもうお腹いっぱいです

大峯山寺の近くに多く咲いていたシャガの花

参考

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