1月 霧氷を見に行こう!バスで高見山を日帰り登山

山行

はじめに

 「登山はじめたばかりだけど、きれいな雪山の景色が見たい!」とお考えのあなた。そんな贅沢な望みを叶えてくれる山が、関西にあります。

 私は1月に奈良交通の霧氷バスを利用して奈良県の霧氷の名所、高見山へ行ってきました。

 高見山は台高山脈の北端、奈良県吉野郡東吉野村と三重県松阪市の境にそびえ、その山名の通り山頂からの眺めが素晴らしい山です。東西に細長い山容をしており、南北方向から見る緩やかな姿と東西方向から見る尖った姿が対照的です。後者の二等辺三角形に似た山容から関西のマッターホルンとも称されます。

図 高見山の霧氷

 また四季を通じて親しめる山でもあります。春から初夏にかけてはアセビ、ツツジ、コアジサイなどの花が咲き誇り、10月中旬から11月上旬にはブナやヒメシャラの黄葉が楽しめます。そして冬のよく晴れた朝には山頂の北側のブナ林に霧氷がみられます。

 登山道は指導標や階段の整備が行き届いています。積雪期の1月から2月頃には奈良交通が霧氷バスを運行し、多くの登山者が訪れます。冬の登山をはじめて間もない方にもおすすめの登山コースです!

基本情報

  • 日程:1月13日(日)
  • 山域:台高山脈(奈良県、三重県)
  • 山名:高見山(1,248.39m)
  • 体力:★★☆☆☆
  • 技術:★★☆☆☆
  • 展望:★★★☆☆
  • コースタイム:3:55(標準)/5:59(積雪期)
  • 距離:約6.8km
  • 最寄り駅:近鉄大阪線 榛原駅
  • 最寄りIC:名阪国道針ICから約33km
  • 駐車場:たかすみ温泉、小峠に若干の駐車スペース(無料)、大峠に約20台の駐車場(無料)
  • 立ち寄り:たかすみ温泉(500円)

コース概要

 高見山の主な登山コースは、以下のとおりです。

  • 杉谷道:南西側山麓の高見山登山口から登るコース
  • 平野道:西側山麓の下平野、たかすみ温泉から登るコース
  • 大峠 :高見山駐車場から山頂へ至る最短コース
  • 黒石山・天狗山縦走コース:北から高見山地を縦走するコース
  • 台高山脈縦走路:明神平、伊勢辻山からの縦走コース

 今回は、高見山登山口バス停から小峠を経て山頂に至り、山頂で昼食を食べます。帰路は高見杉を経て下平野のたかすみ温泉に下山し、たかすみ温泉で汗を流して帰ります。スタートとゴールが異なりますがご安心を。奈良交通の霧氷バスがちょうどいいダイヤで運行していますので、ありがたく利用させてもらいましょう!

 ヤマレコによるコースタイムは以下のとおりです。

行程 コースタイム 距離
標準 高見登山口 -1時間-小峠 -20分-杉谷平野分岐 -50分-高見山 -35分-杉谷平野分岐 -30分-高見杉 -40分-下平野 3:55 6.8km
積雪期(1.5倍) 高見登山口 -1時間30分-小峠 -30分-杉谷平野分岐 -1時間15分-高見山 -53分-杉谷平野分岐 -45分-高見杉 -1時間-下平野 5:59 同上
図 周辺図
出典 ヤマレコ
図 行程図
出典 ヤマレコ

アクセス

マイカー

 駐車場は、以下の場所にあります。

  • たかすみ温泉(電気自動車の充電スポットも有)
  • 大峠(約20台)
  • 小峠(若干の駐車スペース)

駐車場と山頂を往復する行程なら、下山後にその足でお風呂も楽しめるたかすみ温泉に停めるのが便利かと思います。最短で登頂をめざす場合は、大峠からの往復がおすすめです。

公共交通

 最寄りの鉄道駅は近鉄大阪線の榛原駅です。

 そこからは奈良交通の臨時便霧氷バスに乗り換えます。1月上旬から2月頃末頃の土日祝に限り運行しています。往きは高見山登山口で下車し、帰りはたかすみ温泉から乗車できますので便利です。

 霧氷バスの時刻表は以下のとおりです。

往路 復路
榛原駅(南口) 8:15/9:15発 たかすみ温泉 15:00/16:00発
高見山登山口 8:53/9:53着 榛原駅(南口) 15:43/16:43着

 運賃は以下のとおりです(2020年2月時点)。

運賃 大人 子供
往路 ¥1,080 ¥540
復路 ¥1,120 ¥560

 その他の期間については、奈良交通の路線バスと東吉野村の運行するコミュニティバスを乗り継ぎアクセスできます。詳細なアクセス方法は「登山口ねっと!」にて紹介されています。

近鉄榛原駅から霧氷バスに揺られて高見山登山口へ

榛原駅のホームに降り立つと、なんと乗客のほとんどが赤や青のウェアをまとった登山者ではありませんか。「全員バスに乗れるかな」と一抹の不安を覚えます。

図 駅前の臨時バス乗り場

駅の南口に臨時のバス売り場の看板が大々的に設置されています。これなら迷いません。

図 霧氷バスの切符売り場

切符を買って乗車時刻を待っていると乗客全員が乗れるよう2台のバスがやってきました。心配は杞憂でしたね!

図 高見山登山口行きのバス

8:15、榛原駅発の霧氷バスに乗車します。所要時間は40分ほどです。車内で登山届が配られました。未提出の方は車内で書いて提出してゆきましょう。

図 奈良交通の高見山登山口バス停

 バスは定刻通り8:53に高見山登山口に到着しました。

図 奈良交通バス停と同じ場所にある東吉野村のコミュニティバスのバス停

山行記録

高見山登山口から小峠へ

 大まかな予定は、高見山登山口を9:00頃に出発し、12:00頃に山頂に到着します。頂上の避難小屋で昼食を食べて13:00頃に出発すると15:30頃にたかすみ温泉に下山します。帰りの最終バスは16:00なので下山後に入浴するには少し早足で歩く必要があります。

図 バス停からもと来た道を戻る

 登山口近くには公衆トイレがあります。準備を済ませたら靴紐を締めて、さあ出発です。

図 登山口には右手の階段へ

バスで通ってきた道を100mほど戻ります。旧道との分岐のほど近くに登山口の標識があります。

図 登山口

標識に従い登山口へ向かいます。階段の右側に水場もあります。登山口ねっと!によると雨の後は濁ることもあるとのことなので、飲水は持参するのが吉です。

図 登山道の始まり

高見山への指導標に従い山裾にとりつきます。

図 民家の裏の道を登る

杉や檜の植林と民家の境界を歩いていくと、山の神の祠があります。側には古い道具などの飾りが掛けられています。

「どうしてこんなところに鯛の飾りが?」と思われるかもしれませんが実はこの道、伊勢南街道と呼ばれる旧道だそうです。海と山をつないだ往時の賑わいを伝える粋な飾りです。

図 撞木松

登山道はところどころ石畳になっています。これも当時のものでしょうか。伊勢南街道は紀州候の参勤交代にも利用されたことから、紀州街道とも呼ばれたそうです。今風にいえばハイウェイのような幹線道路だったのかもしれません。

図 古市

撞木松を過ぎ、さらに登っていくと尾根上の平坦な場所に出ます。古市と書かれた看板には、

紀州、大和、伊勢からの人々が集まり、米、塩、魚その他の市が立った

東吉野村

とあります。

9:39、雲母曲(きららひじ)という坂を通過します。きららとは雲母という鉱物の古称で平安中期に編纂された辞書、倭名類聚抄に記載があります。土中の雲母が光を反射してきらきらと輝く様から呼ばれるようになったのでしょうか。

図 雲母曲

「雲母」と書いて「きらら」と読ませる地名は、京都の修学院から比叡山に登る雲母坂などにも見られます。また役者絵や美人画の背景に雲母を刷り込みラメ感をもたせた錦絵を雲母絵(きらえ)とも呼びます。

昨今話題のきらきらネームですが、歴史を紐解くと、古代の人々も現代人も似たような感性を持っていたのかもしれないと思うことがあります。

小峠から山頂へ

図 小峠の指導標

9:55に小峠に到着します。

図 小峠

ここで旧伊勢南街道に別れを告げます。鳥居をくぐり、急な坂道につけられた階段で一気に高見山から西側へ伸びる尾根に登ります。

10:15、尾根の上の平野道分岐に到着です。右平野、左杉谷と刻まれた石の道標があります。帰りは平野の方へ向かいます。

20分ほど進むと登山道の先に大きな岩が転がっている所にやってきます。

図 国見岩

10:35、国見岩に至ります。

図 国見岩と案内板

神代の昔、神武天皇が伊勢から高見山に来た時、この岩に登って遠望したと伝えられています。

植生が広葉樹林に変わり、踏み跡にも雪が積もってきます。軽アイゼンを装着します。

図 霧氷

この辺りから、木々の枝に白い霧氷が付いているのが見られるようになります。

図 息子岩の案内板

10:39、息子岩の案内板を過ぎます。岩自体は100mほど下の沢にあるそうですが、木々が茂っていてみえませんでした。ここから小石を投げて岩に当たれば男子を授かるといわれているそうですが、かなり難しそうです。

図  揺岩の案内板

10:47、揺岩を通過します。

図 明るい登山道をゆく

風が吹くとサラサラと音を立てて霧氷が舞います。

図 風に舞う霧氷

11:00、笛吹岩に着きます。

図 笛吹岩の案内板

登山道から少しそれると南側への展望が開けた場所に出ます。台高山脈、その向こうに大峰山脈の山々が見えます。

図 笛吹岩から南の眺望

標高が上がるにつれて積雪も増えてきます。

図 高見山のブナ林

山頂付近はブナ林です。葉を落とした木々の間からの景色を眺めます。

図 小ぶりな霧氷

霧氷は一日の中でも気温の低い午前中によくみられます。日が昇り気温が高くなる昼過ぎには溶けてしまうことが多いので、霧氷を見たい方はできるだけ早い時間帯に山頂に着くようにしましょう。

図 ブナのトンネル

霧氷に覆われた白い木々のトンネルの中を山頂へ進んでいきます。

図 高見山頂直下

ブナの木がまばらになってくると、もうすぐ避難小屋が見えます。

図 山頂の展望台兼避難小屋

11:25、高見山山頂に到着です。

避難小屋と並んで高角神社があります。神武天皇が東征の折、道案内を勤めたといわれる八咫烏を祀っています。

図 山頂で休憩する人たち

山頂では多くの人が写真を撮ったり昼食を食べたりしています。

図 東の眺望と中央にそびえる三峰山

高見山の名に相応しく、全方向への景色が楽しめます。天気に恵まれ、美しい冬景色を満喫できました。

図 御杖村方面

景色を一通り眺めたらお昼ご飯にしましょう。

図 昼食の餅入りカップラーメン

お昼ご飯は、簡単にカップ麺へ正月に買ったお餅を入れていただきます。餅を足すことで満腹感を得られます。ラーメンだけではお腹が空くときはトッピングにおすすめです。

図 成長した山頂直下の霧氷

1時間ほど休憩し、12:25に山頂を発ちます。


先ほど登ってきた道を平野道分岐まで戻りましょう。

図 ブナ林の間から見える北西の眺望

体力が消耗している下山時の方が事故が多いので、一歩一歩気をつけて歩きます。

図 室生火山群
図  笛吹岩

12:30に笛吹岩、12:39に国見岩を通過します。12:53、平野道分岐に戻ります。

平野道を通ってたかすみ温泉に下山

 帰りは平野道で下山します。植林の中を山腹を横切り(登山では「トラバース」という)ながら、ぐんぐん標高を下げてゆきます。疲れた脚には堪えますが、気を緩めず歩きましょう。

 道は谷筋に降りてきます。倒壊した小屋を過ぎると、

図  高見杉

13:15、高見杉の小屋にやってきます。高見杉は樹齢700年以上ともいわれます。

図 民家の脇にある平野登山口

川のせせらぎが聞こえたら間もなく平野の登山口に到着です。

図 平野川を渡る

平野川を渡り右へ曲がって川沿いに進み、13:50にたかすみ温泉に到着です。

おわりに

 高見山山頂からの眺望は必見です!小峠から平野道分岐までの急坂は、山頂の景色を見るための試練だと思ってがんばりましょう。旧伊勢南街道の石畳や古市跡、神武天皇が立ったという国見岩など歴史を今に伝える場所も点在しています。古代の人々が歩いた道を辿りつつ、ロマンあふれる神話や往時の生活に思いを馳せてみてはいかがでしょう。

 霧氷バスのおかげで台高山脈の山の中では比較的アクセスがしやすく、登山者も多いので冬でも安心して歩くことができました。お目当ての霧氷もみられ大満足な山歩きでした。

持ち物

 通常の登山装備に加えて換えの手袋、靴下、防寒具、軽アイゼンなどをご準備ください。

費用

項目 費用
鉄道運賃(大阪難波〜榛原往復) ¥1,680
奈良交通霧氷バス(往復) ¥2,200
たかすみ温泉(日帰り入浴) ¥500
合計 ¥4,380

 霧氷バス利用者は、たかすみ温泉の日帰り入浴料金が20%割引(500円→400円)になる割引券がもらえました。

参考

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