はじめに
「今年こそ冬のアルプスへ!」とお考えのそこのあなた。木曽駒ヶ岳はいかがでしょう。
なんといってもアクセス至便、コースも難しくなく、ホテルもあるという三拍子揃ったお山なのです!
基本情報
- 日程:2019年3月27日(金)〜28日(土)
- 山域:中央アルプス
- 山名:木曽駒ケ岳(2956.1m)
- 体力:★★☆☆☆
- 技術:★★★☆☆
- 展望:★★★★☆
- コースタイム:約3:40
- 距離:約3.5km
- 最寄り駅:JR飯田線 駒ヶ根駅
- 最寄りIC:駒ヶ根IC
- 駐車場:菅の台バスセンター(800円/日)
コース概要
ホテル千畳敷から千畳敷カールを登ります。乗越浄土から稜線を辿り木曽駒ケ岳に登頂後、同じ道を歩いて戻る往復コースです。
行程 | 距離 | コースタイム(標準) | コースタイム(積雪期) | |
---|---|---|---|---|
1日目 | ホテル千畳敷〜乗越浄土〜宝剣山荘〜中岳〜駒ヶ岳頂上山荘〜木曽駒ケ岳(往復) | 3.5km | 3:40 | 5:32 |
ヤマレコによる標準コースタイムは以下のとおりです。
標準のタイムを1.5倍した積雪期のコースタイムは以下のとおりです。
アクセス
木曽駒ヶ岳は、ロープウェイで一気に標高2612mの千畳敷まで到達できる点でアクセスのよい山です。高速バス、鉄道、マイカーなど各交通手段も選べます。
気をつけるべき点として、菅の台バスセンターから駒ヶ岳ロープウェイ山麓側の駅のあるしらび平までの区間のマイカー規制があります。
公共交通の場合もマイカーの場合もしらび平へは中央アルプス観光の路線バス「駒ヶ岳ロープウェイ線」に乗り換える必要があります。
公共交通
東京、名古屋、大阪など各都市からのアクセスは、一般社団法人 駒ヶ根観光協会オフィシャルサイト 信州駒ヶ根ガイドのホームページにまとめられています。なおこのサイトでは、高速バスでのアクセス便利であると紹介されています。
確かに、遠方から木曽駒ヶ岳への登頂をめざすなら、夜行バスなどで乗り入れて早朝に出発するのがよいと思います。
鉄道で行くなら、JR飯田線の駒ヶ根が最寄り駅です。ここから路線バスに乗り換え、終点のしらび平まで向かいます。ただし鉄道で遠方からアクセスする場合、到着当日に登頂をめざすには行動開始時刻が遅くなるので不適です。一泊二日の旅程で1日目にホテル千畳敷などに宿泊し、2日目の朝から登るのなら問題ないでしょう。
各バス停からロープウェイ駅のあるしらび平までの往復運賃は下の表のとおりです。
バス停 | 対象者 | 大人 | 子供 |
---|---|---|---|
駒ヶ根駅前 | JR飯田線を利用の方 | ¥2,100 | ¥1,060 |
すずらん通り | 高速バス利用で駒ヶ根バスターミナル下車の方 | ¥2,100 | ¥1,060 |
女体入口(駒ヶ根IC前) | 高速バス利用で駒ヶ根IC下車の方 | ¥1,920 | ¥960 |
菅の台バスセンター | マイカー利用の方 | ¥1,660 | ¥840 |
実際の計画時には、中央アルプス木曽駒ヶ岳ロープウェイのホームページにて運賃・時刻表の最新情報をご確認ください。
マイカー
マイカーの場合は、菅の台バスセンターの駐車場に車を停め、そこから路線バスに乗り換えましょう。駐車料金は私が訪れた際は1日600円でしたが、2019年10月より1日800円になりました。
菅の台バスセンターから千畳敷へ
関西を日付の変わる頃に出発し、名阪国道、中央自動車道を通り駒ヶ根ICで降ります。IC近くのコンビニエンスストアで朝食におにぎりやパンを買って菅の台バスセンターへ。辺りがまだ暗い4:00頃に到着しました。
駐車場に停まっている車はまばらで、十分なスペースが有りました。近くには公衆トイレもあります。室内は暖房がついていて暖かいです。
私たちが行った3月(11月中旬〜4月上旬)の始発バスの時刻は8:15でした。4月下旬〜11月上旬までの始発時刻は7:15です。
それまで車内で仮眠しました。この時が私にとって初めての車中泊でした。3月下旬、夜明け前の標高850mでは寒さを感じました。車内に毛布や寝袋の準備があれば安心だと思います。
8:15に始発のバスがやってきました。
バスは曲がりくねった道を走りぐんぐん標高を上げていきます。座っているだけで登れるなんてありがたいです。
8:45ごろに標高1,662mのしらび平に到着しました。
ロープウェイに乗り換えます。9:05にロープウェイでしらび平を出発します。
標高2612mの千畳敷まで一気に登ります。
好きです。ロープウェイ。
高度が上がるに連れて白い雲が湧いてきて、ゴンドラが千畳敷駅に着くころには視界は真っ白になっていました。
しばしば麓では晴れていても山の上は雲を被っていることがあります。この後、山の天気を舐めてはいけないことを痛感することになります。
ホテルのカフェスペースからは、伊那谷やその向こうに南アルプスが一望できます。
ただ、それもお天気次第。山行前にはてんきとくらす「木曽駒ヶ岳」などで天候の確認をお忘れなく。
ひとまず、ホテル千畳敷にチェックインします。着替えなど不要な荷物は置いていきましょう。
ホテルは標高2,612mの山上に建っていますが、山小屋ではなくれっきとしたホテルです。個室は6畳ほどの和室です。どこか懐かしい旅館のような雰囲気があります。天気が良ければ、山側に面した窓から千畳敷カールの景色がほしいままのロケーションです。ぬくぬくのお部屋からも山が眺められるなんて、山好きにとっては極上の贅沢ですね。
山行記録
千畳敷カールを経て乗越浄土へ
少し日差しが出てきました。9:30頃、ホテル千畳敷を出ます。ホテルの建物から一歩出ると一面の雪景色です。
粉のように細かな雪が風に舞っています。
あっという間に雲が流れ、青空の下に灰色の岩肌と白いベールを掛けたようなカールの地形が姿を見せます。
看板が足元に埋まっています。雲がすごい勢いで流れています。
さっきから、カールカールと行っていますが「カールってなにそれ美味しいの?」という方へカールをご説明しましょう。
カールはドイツ語のKarに由来する氷河地形の一種です。事典には
圏谷とも。山稜の直下に発達した氷河による氷食で作られた半球系の窪地地形。背後に半環状の急峻な(時に垂直な)圏谷壁をもち,圏谷底はゆるやかな盆状の凹地となり,全面出口には末端堆石堤(堆石)が作られる。
(中略)
飛騨・木曽・赤石・日高山脈に見られる圏谷群は山脈の主に東側(風下側)に分布し,第四紀のウルム氷期に形成された。
百科事典マイペディア
とあります。
なるほど、わかったようなわからんような小難しい説明です。ここはざっくりとかつて氷河があった名残りの地形で、めっちゃ雄大な谷!とご理解ください。
はじめて見る方は、圧倒的な冬の日本アルプスの姿に圧倒されること請け合いです。
山は逃げないといいますが、この機を逃すと次に来られるのはいつになるかわかりません。山は逃げませんが、私たちの時間には限りがあります。この瞬間、目の前にあるものと一期一会のつもりで対峙します!
ここは山歩きをしなくても訪れることのできる絶景撮影スポットですので、ここぞとばかりにシャッターを切りましょう。
ひととおり写真を取り終え歩きだします。
12本爪のアイゼンをつけますが、ワカンを使うほどではありません。
稜線に近づくに連れて雲が増えてきます。
乗越浄土に詰め上がる辺りは急な坂です。
10:30頃、乗越浄土に到着します。
中岳から木曽駒ヶ岳山頂へ
乗越浄土から南に向くと宝剣山が見えます。宝剣山の岩場は滑落者も出る難易度の高い場所ですので、上級者を除き冬季は決して立ち入らないようにしましょう。
稜線に上がると西寄りの風が強烈に吹き付けてきます。雪宝剣山荘の陰で防風のためサングラスをゴーグルに換え、手袋も薄手のものにオーバーグローブを重ねます。
天狗荘を左手に見送り中岳へ向かいます。ピークを踏む道と巻道との分岐に近づくにつれて遮るものが無くなり、烈風にさらされるようになります。
雪面は、サクサクと締まっており歩きやすいものの時おり身体が倒されそうになり、立っていられないほどの風も吹きます。そんな時は、しゃがみ込みピッケルのピックを雪面に刺す耐風姿勢を取ります。
11:15頃、分岐を右側の中岳の方面に進みます。11:30頃に中岳に到着します。身体が倒されそうな強風の中を歩くのはなかなか体力を消耗します。
岩陰で休憩していると、木曽駒ヶ岳山頂の方から登山者が歩いてきます。「頂上からですか?」と尋ねると、「風が強すぎて…撤退してきました」と言います。強風で撤退することがあるとは驚きました。
木曽駒ヶ岳頂上まで残り500m、天候は悪化してきています。友人と相談し、風が弱くなってきたタイミングを見計らって挑戦することにします。ホテルに15:00までに着くよう、登頂するかどうかの判断は12:00をリミットにします。天候が変わらないか厳しくなるようなら引き返します。
風が弱まりました。11:40出発です。
12:10頃、山頂に到着です。
頂上には方位盤と真新しい鳥居の木曽駒ヶ嶽神社奥宮があります。神社は雪に半ば埋もれています。三角点は見つけられませんでした。
相変わらず風は強く、石を積んで築かれた塀で風を避けながら補給をします。曇り空で遠望はできませんが木曽の御嶽山などが見えます。
12:35、出発です。帰路は行きと同じ道を辿ります。
13:40に乗越浄土を通過します。
14:30頃にホテル千畳敷に戻りました。
ホテル千畳敷に宿泊
建物に戻りほっと安堵。ホテルの中や周辺を探検します。
ホテルの山側には信州駒ケ岳神社があります。ほとんど雪に埋もれています。
ロビーには売店やカフェスペースがあります。
千畳敷の標高にちなんだ「2612」の数字を冠したグッズがたくさんあります。
写真はありませんが大浴場に水洗トイレもあります。
費用は、ホテル千畳敷シンプル宿泊プラン(一般客室4名定員)で10,500円/人でした。
訪問の際にはホテル千畳敷のホームページをご確認ください。
おわりに
雪山で、しかも森林限界を超える場所の気象環境の厳しさは、様々な情報から想像していました。現実に身体が飛びそうになるほどの強風の洗礼を受け、風が強いだけでも心身ともに疲弊すると実感しました。
実際の環境に身をおくことで実感としてわかることがありました。それでも対処できたのは、耐風姿勢などの予備知識のおかげです。知っていれば何でもできる訳ではありません。それでも知識は偉大です。
強すぎる風を除けばアクセス至便、コースも難しくなく、ホテルもあるなど三拍子揃ったお山です。はじめての冬の日本アルプスデビューを目指している方はぜひご検討ください。
費用
項目 | 費用 |
---|---|
高速道路料金(関西〜駒ヶ根IC 往復) | ¥8,640 |
ガソリン代 | ¥4,000 |
駒ヶ岳ロープウェイ運賃(往復) | ¥1,660 |
菅の台バスセンター駐車料金 | ¥800 |
外食費 | ¥2,000 |
ホテル千畳敷(一泊二食) | ¥10,500 |
合計 | ¥27,600 |
参考
- ヤマレコ https://www.yamareco.com/yamapla/ (最終閲覧日:2020年2月5日)
- 一般社団法人 駒ヶ根観光協会オフィシャルサイト 信州駒ヶ根ガイド http://www.kankou-komagane.com/accsess/ (最終閲覧日:2020年2月5日)
- 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ https://www.chuo-alps.com (最終閲覧日:2020年2月5日)
- ホテル千畳敷 https://www.chuo-alps.com/hotel/ (最終閲覧日:2020年2月5日)
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